AKIRA

1988年制作のアニメ映画。大友克洋監督。公式サイトはこちら



ここまで作品に引っ張り込まれたのは久しぶりな気がする、というのが見終わった後の率直な感想だ。20年以上前に公開とは到底思えない緻密さ、リアルさが凝縮されている作品だった。物語序盤の暴走族同士の抗争に始まり、建造物等の破壊や崩落、登場人物の表情や挙動まで、現代と比べても非常に高いレベルで描かれている(むしろ現代作品より上の感すらある)。そういったひとつひとつの細かい点を含め、物語の展開自体も古臭さを感じさせない。120分があっという間に過ぎる。海外でカルト的人気を誇るというが、素直に納得できる。

話の内容としては、謎の存在「アキラ」を巡り、舞台となるネオ東京が存亡の危機に発展するといったもので非常に壮大だ。そのなかに、主人公の金田とデコスケ野郎こと鉄雄の対比がある。元暴走族仲間の鉄雄に対し、リーダーとしてケジメをつけるため、破壊を繰り返す彼の前に臆さず立ちふさがる金田の姿は男から見ても格好良い。そんな金田に対して劣等感からくる敵意を隠さない鉄雄の心情も理解できる。そんな二人の対比があるからこそ、非常に壮大な物語に置いてけぼりにならずに済む。脚本に注力したであろう背景が窺える。

2011年9月現在、アメリカでの実写版が制作されているという話は聞いていたが、この作品をリメイクする必要は特にないと思う。現時点で、十分現代の作品と比肩できるからだ。ヘタをすると「DRAGONBALL EVOLUTION」のように悲劇になりかねない。この劇場版と、漫画版(海外でも翻訳版が発売されているそうだ)があれば良いと思われる。僕は劇場版から入ったが、原作は全6冊の漫画版なので、見かけ次第読んでみたい。